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浮気や離婚の関連書籍の要約を紹介するコーナーです。
今回の本は下記。
「少しでも有利に離婚したいならきっちり証拠を集めなさい」
西村隆志ら3弁護士の共著 1,400円(税別)
西村隆志法律事務所に所属する3人の弁護士の共著です。
離婚のいろいろな側面において、有利に進めるにはどんな証拠を取っておくのがよいか、法律家の観点からまとめた本です。
まず、離婚に関する素朴な質問に答える形で導入部としている。
例えば「離婚の覚悟ができたらまず何をすべきか?」「弁護士に相談した方がいいか?」など。
Q. 自分に原因があって離婚したい場合はどうすればよいか?
相手が離婚に応じてくれれば問題なく離婚できる。
しかし、相手が拒否してきた場合、原因がある(例えば浮気をした、など)側から離婚を請求して裁判で認められる確率は低い。
数年以上の長期間の別居をするなどは認められやすくなる方法である。
これなどは、浮気をされた側が交渉の主導権を持つことを意味するし、「出て行って!」などと言って別居させると相手に有利になることを意味する。
浮気した配偶者が離婚したがっている場合は、同居のまま離婚を渋って、財産分与・慰謝料・養育費などでできるだけこちらに有利な条件を飲ませた方がいいことになる。
そういう見方で読むと、この本は役に立つ。
相手の携帯電話を見るのは厳密には違法だが、実際に法的責任が追及されるのは稀とのこと。
ただし、実際に入力してパスワード解除を試行するのではなく、通信技術を使ったハッキングでやったりすると、違法性が強いとみなされる可能性があるとのこと。
なぜ証拠集めが必要なのか?
証拠集めが必要な理由は2つ。
例えば、相手の浮気が原因で離婚したい場合、浮気の証拠がなければ、相手が拒否すれば離婚できないかもしれないし、慰謝料も取れない。
また、離婚が成立して財産分与や慰謝料の話し合いができても、合意の証拠を書面で残しておかないと、後で相手が約束を破った時に手を打てない。
事前の証拠集めが大事
調停や裁判に進んだ時、相手は事実を否定してくる可能性がある。
例えば、間違いなくDVを受けていたのに、「暴力など振るっていない」と主張してくるとか。
その時、証拠がなければ裁判官は認めてくれない。
意見の対立が予想される時は、事前に証拠を揃えておくことが大切。
証拠集めのチャンスを逃さない
これと思った会話は録音する。
不審なメール、LINEの文書はすかさず写メを撮る。
出来事の日記をつけておく。
怪我をさせられたら、診断書をもらい、負傷部位と顔が一緒に写るように自撮りする。
その時に残しておかないと、後からは取れない証拠が多い。
家を出て別居する場合は、証拠も持ってでること。後から相手に提出してもらうことは難しい。
例えば、共有財産や相手の収入の情報。不倫の証拠。
知人の連絡先リストなども案外忘れやすい。
最低限持って出たいもの
シミュレーション
記入していくだけで、どんな離婚形態になり、何と何をしなければいけないかが明確になるシミュレーション書式がついている。
事例1 性格の不一致って何?
夫が細かいことまでチェックしてすべて否定してくる。
自分は接待と称して飲みに行ってばかりで、子作りにも協力しない。
卵アレルギーと言っているのに相手の親から無理やり卵を勧められ、アナフィラキシーショックになった。
もう離婚したいが、相手は応じる気配はない、という事例。
「性格の不一致」や「配偶者の親族との不和」は、よほどひどくないと離婚は認められないが、どんな証拠を取っておくべきか、指南してくれている。
事例2 夫婦の財産は誰のもの?
結婚した途端、嫁には高圧的に接し、わずかな生活費しか渡さず、家事や子供の世話は任せきりの夫。
それでも我慢したのは、子供の頃に両親が離婚して淋しい思いをしたので、自分は離婚しないと決めていたため。
しかし、義父母の老後も目前に迫ったのに、嫁の不安に耳を貸さず、何の手も打たない夫に愛想がつきた。
離婚を切り出すと意外にもあっさりOK。長女夫婦のところへ転がりこんだ。
経済が不安で、友人に財産分与のことを聞き、我が家の財産を調べ上げた。
ところが財産分与を切り出すと、「もう一度やり直さないか」と言い出す現金さ。
早くケリをつけて離婚し、もらうものはもらいたいと考えている女性の事例。
財産分与、年金分割、養育費、婚姻費用などの請求を有利にするために、どんな証拠を取っておけばいいか、教えてくれている。
事例3 事実上結婚生活が破綻している家庭内別居
交際期間の2回目のセックスでできちゃった婚。結婚してからは6年になるが、一度もセックスしていないという女性。
夫は結婚と同時に自営業を始めて仕事浸り、帰宅も遅い。
浮気を疑ったりもしたが、シロだった。
家庭内別居状態に加え、夫が事業が軌道に乗っていないのにカードで高額な買い物をするようになった。
今35歳で、まだやり直せると思い、離婚を決意。
セックスレスや多額の借財という理由で離婚を認めさせるのはなかなか難しいが、それについてアドバイスが載っている。
事例4 子供の親権は渡さない
3人の子供がいる主婦。夫に浮気が発覚し、子供まで作ったことがわかって、離婚することに。
いったんは子供は要らないと言ったくせに、俺が親権を持つと言い出して、慰謝料は100万円と勝手に決めてきた、という事例。
親権取得の争点と証拠集め、不貞行為の証拠集めなどを解説している。
親権について
親権について話し合いがまとまらなかった時、家庭裁判所の判断を仰ぐことになるが、この時、調査官が色々な調査をする。
調査先は、本人、子供、同居の家族、保育園や幼稚園、学校、かかりつけ医などさまざまで、自宅訪問も行われる。
調査官は、訴訟における双方の主張を踏まえて調査を行い、調査結果と調査官の意見を裁判所に提出することになる。
この報告書は裁判所の判断に大きな影響力を持つので、日頃から子供の関係先とよい関係を作っておくことが大切。
また、子供を残して別居してしまった場合、後から夫の許可なく子供を連れだすことは違法行為に当たるので注意。
親権を取るつもりで別居するなら子供を連れていくこと。
間違って自分だけ家を出てしまった場合は、勝手に後から連れ出さず、できるだけ早く、家庭裁判所に監護者の指定と子供の引き渡しを指示してもらうこと。
不貞行為について
証拠は価値の高い物から並べると次のとおり。
スマホやパソコンで気になるメールやLINEの画面があったら撮影しておくことを勧めている。
しばしばニックネームが使われるので、メルアドなども撮影しておかないと本人同定ができないことに注意。
SNSは友達限定で重要な証拠が配信されている可能性があるので、配偶者の友人で信頼できる人がいるなら画面を見せてもらうこと。
素人の尾行はバレやすいので、興信所・調査会社の利用も示唆している。
ただし、証拠写真の詰めが甘いと証拠能力が下がるので、事前にしっかり打ち合わせすること。
事例5 ドメスティックバイオレンス(DV)からの脱出
長女が生まれてまもなく、飲酒時の暴力がスタート。
ついに娘を連れて実家に避難。
実家に押しかけてきて暴言、乱暴の限りを尽くす夫を妻の両親が冷静に撮影記録。
離婚成立後、再び脅迫が始まったので、「保護命令申立て」をし、接近禁止命令が出て一安心。
これから慰謝料や財産分与の話し合いをしていく、という事例。
DVの証拠の取り方を指南している。
怪我の写真、暴行の録音、日記をつけること。
診断書も重要な証拠だが、医師には恥ずかしくても原因がDVであることを告げないと、カルテに違う内容が書かれてしまうことに注意。
離婚にまつわる色々なことに関する証拠の取り方を具体的に例示してくれている章。
1.離婚理由
協議で離婚に合意できない場合に、民法上、離婚請求が認められている理由は5つしかない。
そのひとつ、「不貞の場合」の証拠の例。
「悪意の放棄」についても「ギャンブルにのめりこんで生活費を入れていない」ことなどの証拠が例示されている。
実は離婚の理由で一番多いのは、5つ目の「その他婚姻を継続しがたい重大な理由」である。
暴行・虐待、生活の不一致、宗教、性的不能・性交拒否・性的異常、配偶者の親族との不和など、いろいろなものが含まれるが、よほど程度がひどくないと認められない。
したがって証拠が重要であり、証拠の例示はとても有用な情報だと思える。
2.お金にまつわること
財産分与
財産分与の方法、それを有利に進めるための証拠取りなどについて詳しく書かれている。
不動産はローンがない場合と残っている場合に分けて、具体的に書かれている。
離婚前に満期を迎える生命保険金、退職金なども共有財産とみなされ、財産分与の対象となるのは興味深い。
慰謝料
裁判まで行った場合の相場は100~300万円。
どんなに苦痛を受けても証拠がなければ、取れない可能性が強い。
日記など具体的状況の記録もあった方がいい。
浮気の場合、配偶者だけでなく浮気相手からも取れるが、既婚者であることを隠して浮気していたような場合は難しい。
年金分割や婚姻費用についても説明がある。
親権を構成する「身上監護権」と「財産管理権」の説明。
親権者の適格性判断の基準要素に関する説明。
「子供にとって何がよいか」が下記のような観点から検討される。
1.母親優先 | 母性が健全な生育に必要ということから、基本的に父親に不利。 |
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2.現状の尊重(継続性) | 住所、学校など、子供の環境がなるべく変わらない方を選ぶ。 |
3.子の意思の尊重 | 調停や裁判にあたり、子供が15歳以上の場合は意見聴取が必須で、10歳以上の場合も意思把握に努めるよう定められている。 |
4.兄弟不分離 | なるべく兄弟姉妹を引き裂かない。しかし、この基準は他の基準より優先度が低く、親権者を分けることもよくある。 |
5.その他 | 経済状況は、公的援助や養育費でカバーされうるので、重視されない。 |
面会交流や養育費についても情報がある。