平成以前のアナログ時代、探偵の浮気調査のやり方はどんな風だったか?

平成以前のアナログ時代、探偵の浮気調査のやり方はどんな風だったか?

原一探偵事務所での座談会(2019)

【原一探偵事務所での座談会(2019)】


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現代の浮気調査はデジタル機器やインターネットなどをフル活用します。


しかし、そういうものがなかった時代はどんな風だったのでしょう?


両方の時代を知るベテラン探偵さんに話し合ってもらったらおもしろいのでは?


資料を整理していたら、以前にこのテーマで行った座談会の記録が出てきたので収録します。


(この記事を書いた人:探偵業界ライター 玄徳【徳野 制】


原一探偵事務所 探偵業届出番号:埼玉県公安委員会 第43070145号


業界を代表する探偵社リスト

デジタル現代の調査との違い

現代では調査にフル活用されているものが、それがなかった昔はどうしていたのかという観点で順番に見ていきます。


IC交通カード(SUICA等)

昔はみんな切符を買っていた。


対象の行き先を確認するために券売機に近づく必要があり、今より発覚リスクのあるタイミングが多かった。


追尾側は遠目に観察しながら、行先を予想して切符を買う場合もあった。


ETC

料金所で人間が徴収していたので、今より通過に時間がかかった。


しかも料金所を出た途端、分岐という大きな失尾リスクが待ち構えている。


そこで失尾するとまったく逆方向に追ってしまうことになりかねない。


料金所に入る前は距離を取り、対象が料金所に入るタイミングで事前に小銭を用意した上で急速に距離を詰め、料金所を短時間で通過して分岐で失尾しないようにする、ということをしていた。


これ以外に、その場の状況や相手の警戒度次第で他のテクニックを使うこともあった。


別のゲートを通過する、あるいは先に通過しておいて脇のスペースで待ち、ゲートを通過した対象を追う、など。


携帯電話

スマホはおろかガラケーもまだなく、遠方の通信にはポケベルと公衆電話を使っていた。(無線は半径2kmしか交信できない。)


地図アプリ・カーナビ・Street View

当社はゼンリンの住宅地図全巻を毎年購入していて、すごいボリュームがあった。


目的地が載った1枚とその周辺の地図3枚、合計4枚を会社でコピーして現場に持っていく。


それができなかった場合は現地調達。


当該地域の住宅地図を常備している場所は、消防署、警察署、ローソン(なぜかコンビニの中でここだけ)の3つ。


うまいことを言ってコピーを入手するテクニックがあった。


その際も本当の目的地を言わず、少しずらした地点の住所を言うようにしていた。


田舎に行くと、〇〇町1894、1895…というような住所で表札が全部同じ名前というような場所があり、地図を用意していても現地でわかりづらくて苦労することもあった。


今だと、ストリートビューがあるので、デスクで下見をして、調査計画まで作れる。


ICレコーダー

場所や時間の記録はメモに頼っていた。


追尾や撮影、無線をやりながら筆記するのは本当に大変だった。


それがカセットテープを活用するようになった。


今はICレコーダーで記録していく。


オートマ車

無線、撮影、追尾、記録など運転時に同時にやることがたくさんあるのに、車はマニュアル車で運転も手間がかかった時代があった。


デジタルビデオカメラ

これが一番影響が大きいのではないか。


フィルムカメラの時代は本当に大変だった。


24枚撮りでもすぐなくなるので、フィルムを体のあちこちに隠し持つ技術があった。


フィルムは明るさに応じてISO感度(400, 800, 1600, 3200)を使い分ける必要があった。


ホテル出入りなど大事なシーンはたいてい高感度フィルムに換える必要があった。


高感度フィルムは高額だが、数枚しか写っていない場合もどんどん現像に回すなど、フィルムは惜しまずに使っていた。


当時、現像サービスに毎月数百万円どころでない経費を使っていた。あの現像屋さんは今はどうしているのだろうか?


証拠がちゃんと取れたかどうか、現像してみないとわからなかった。


今は初めてみる浮気相手の顔も撮影・スマホ送信して調査現場で共有できる。


フィルムの巻き戻しが終わっていないのに蓋を開けて感光させてしまい、それまで撮影した写真を全部パーにしてしまうことがあった。


うまく証拠撮影できたが、フィルムが終わって自動巻き戻しで大きな「ジー」という音が出てしまい、発覚しないかと焦るようなこともあった。


ビデオカメラでない時代はシャッターチャンスをつかむ技術も重要だった。


今はデジタル動画で撮影しておいて、いい絵の瞬間をプリントアウトすればいい。


調査スタート時の対象者の確認も紙の写真を使っていた。


チームメンバーに写真が配られる。


写真を手に待っているのはいかにも怪しいので、手帳に入れて手帳を見ているフリなどしながら、対象者が現れるのを待った。


デジタル文書

分厚い報告書が手書きの時代もあった。


調査の引継ぎも封筒に入った書類で行っていた。


内説(内容説明書の意味、対象の住所・氏名をはじめ調査に必要な情報)も紙の文書で、外に持ち出す時は暗記したり、暗号化したメモを使っていた。


今は社内のシステムにアクセスし、パスワードを入れて閲覧できる。


夜間営業ガソリンスタンドやコンビニ

自分たちより上の世代、創業当初はこんなものすらなかった。



お話を伺って2005年くらい以前の調査がいかに大変だったかよくわかりました。


昭和にまで遡ると、もう実行不可能とさえ思えます。


昔の探偵は本当に超人的でないと、いい証拠写真は撮れなかったと思います。


今まで探偵関連の書籍やサイトをたくさん調べ、探偵社への取材もたくさん行ってきましたが、こんな情報はどこにもない。


とても印象深かったです。


歴史ある大手探偵社リスト

探偵の歴史にご興味は?

携帯などが普及する以前の探偵調査がいかに大変だったかおわかりいただけたでしょう。


しかし、日本の探偵の歴史は明治時代に始まります。


公衆電話すらなかった時代から、調査は行われていたのです。


当時の探偵社はどんな様子だったのか?


江戸川乱歩の小説にそれを見ることが可能ですが、あくまでフィクションです。


しかし、下記の本は日本初の私立探偵社・岩井三郎事務所を舞台にしたノンフィクションです。


廃刊で入手しにくくなっていますが、要約を収録しているので、どうぞ。


女探偵物語 林えり子著

【女探偵物語 林えり子著】



戦後になって探偵社の数は激増。


その中には悪徳探偵も多く、ヤクザが経営する探偵社もたくさんありました。


その被害は社会問題になり、国会でも取り上げられるに至りました。


探偵業を規制する本邦初の法律、通称「探偵業法」が2006年に成立し、翌年施行されます。


それから20年近く経過し、現在の探偵業は健全なものになっています。


明治時代の端緒から探偵業法後の現代までを追う歴史物語は下記のページに収録されています。