行動調査(撮影編)|プロ探偵の調査技術

行動調査(撮影編)

大手有名探偵社への訪問取材を繰り返す中で教えてもらった調査技術のエッセンスを紹介するコーナーです。

 

今回は最も基本的な調査である行動調査(尾行&撮影記録)の撮影に関する話です。

 

 

現在の調査用カメラ3種の神器

3種の神器カメラ

【調査用カメラ3種の神器】

 

業界大手の原一探偵事務所の場合、現在の主力撮影機材は上掲写真の3つです。

 

左からコンパクトカメラ、望遠デジタルビデオ、アクションカム。

 

この中で最も重要なのが望遠デジタルビデオです。

 

このほかに後で紹介する、眼鏡や腕時計に偽装したカメラも状況に応じて使われます。

 

現在では一眼レフはごく稀にしか使われません。

 

(ただし、今でも画質重視であえて一眼レフにこだわる探偵社もあります。さくら幸子探偵社のインタビューをお読みください。)

 

望遠デジタルビデオ

望遠デジタルビデオ

【望遠デジタルビデオ】

 

調査の在り方を大きく変えた機材です。

 

カメラだとシャッターチャンスを狙うのが上手でないといい写真が撮れませんが、ビデオなら回しっぱなしでOKです。

 

調査が終わってから、ベストシーンを静止画として切り出せばいいのです。

 

シャッターを押す作業そのものが不要になり、尾行に集中できるようになりました。

 

動画は静止画より偽造・加工が困難なので、より証拠価値が高いという利点もあります。

 

アクションカム

アクションカム

【アクションカム】

 

映像をWiFiでスマホに飛ばせる小型のビデオカメラです。

 

アクションカム

【アクションカム】

 

例えばこんな風に使います。

 

アクションカムでの撮影例

【アクションカムでの撮影例】

 

スマホで画像を確認しながら撮れます。

 

従来の隠しカメラはリアルタイムでの画像確認ができなかったので、後で見ると「首から下しか写っていなかった」というようなことがありがちでした。

 

アクションカムならその心配はありません。

 

スマホは相手の注意を逸らす役割も果たしています。

 

相手がスマホをいじっていれば、普通はスマホに注意が行き、実は腰の位置にあるアクションカムに気づきにくくなります。

 

偽装カメラ

腕時計、眼鏡、ボールペンなどに偽装した、子供の探偵ごっこのおもちゃのようなカメラが実際に使われています。

 

眼鏡型偽装カメラ

【眼鏡型偽装カメラ】

 

ターゲットを接写する時に使います。

 

タバコの箱、ライター型のものもありますが、全席禁煙のお店が増えたことで出番が減りました。

 

腕時計型偽装カメラの使い方

【腕時計型偽装カメラの使い方】

 

上の写真でもスマホは相手の注意を逸らす役割を果たしています。

 

撮影しているのは腕時計の方ですが、そちらに注意が行きにくくなります。

 

動きで注意を引きつけながら、相手がよく見ていないところで操作を進めるというのは、手品と同じ原理なのです。

 

すべての基礎となる尾行の技術

撮影も難しいですが、尾行がちゃんとできた上での技術です。

 

失尾や発覚を起こせば、撮影以前に調査が終わってしまいます。

 

そういう意味で、尾行はすべての探偵技術の基礎なのです。

 

その尾行技術の初歩を解説した記事があるので、お楽しみください。

 

内容はすべて探偵への取材に基づく本物です。

 

追想 フィルムカメラ時代の調査

原一のベテラン探偵座談会

【原一のベテラン探偵座談会】

 

大手有名社の原一探偵事務所は創業44年。

 

デジタル機器などなかった昭和の時代から業界をリードしてきました。

 

2019年6月の取材では、その時代を知るベテラン探偵に集まっていただき、テクノロジーや社会の変化が調査方法に与えた影響をテーマに座談会をしていただきました。

 

その内容は別のサイトに掲載していますが、ここではカメラに関する話だけ選んで再収録しています。

 

出席者から出たいろいろなお話をひとつにまとめました。

 

フィルムカメラの時代の調査は本当に大変だった。

 

24枚撮りのフィルムでもすぐになくなるので、替えのフィルムを大量に体に装着していた。

 

体のあちこちがボコボコ膨らんで不自然に見えないよう、上手に隠し持つテクニックがあった。

 

フィルムは明るさに応じてISO感度(400, 800, 1600, 3200)の違うものを使い分けないというのも面倒な問題だった。

 

暗いところでの撮影は、高価な高感度フィルムに交換しないといけない。

 

ホテル出入りなどの大切なシーンはたいてい暗がりの中なので、フィルムを3200に交換だ。

 

フィルムを交換する時は、全部巻き取ってからにしないといけない。

 

巻き取らずにカメラのフタを開けると、感光してそれまで撮った写真が真っ白になって消えてしまう。

 

そんなことをやってしまったこともあった。

 

また、ホテルでのシーンの撮影に成功したが、その直後に大きな音を立ててカメラが自動巻取りを始めてしまい、バレそうになったこともあった。

 

ちゃんと撮れているかは翌日に現像してみないとわからなかったのも、大きな負担だった。

 

当時は現像屋さんに毎月数百万円ではきかない経費を使っていたが、あの人は今どうしているのだろうか?

 

昭和のアナログ時代になかったもので調査の方法に影響を与えているものはたくさんある。

 

IC交通カード(SUICA等)、ETC、携帯電話、地図アプリ・カーナビ・ストリートビュー、ICレコーダー、デジタル文書、インターネットなどなど。

 

しかし、一番大きな影響を与えたのはデジタルビデオカメラではないかと思う。