社内不倫への対応法

企業における不祥事や詐欺をはじめとする諸問題と、探偵を活用した解決方法を考察していくコーナーです。

 

今回は社内不倫への対応を経営者目線で考えてみたいと思います。

 

結論として、予防策と対策の準備が大切です。

 

社内不倫の業務への影響

社内で不倫の噂があるだけで他の社員の士気に何らかのマイナスの影響がある。

 

このことについては多くの経営者にとって自明だと思います。

 

不倫の事実が職場で形になって現れはじめると、マイナスの影響もはっきりしてきます。

 

例えば本人たちはそんなつもりはないのだけれど、二人で話す時は距離も近すぎていちゃついているように見える場合。

 

周囲の人の少なからぬ部分が、「今日も真剣に取り組もう」、「目標を達成しよう」という気持ちが冷めるのを感じるはずです。

 

これがさらに進行して、業務に直接マイナス作用を始めると周囲の士気低下は一気にひどくなります。

 

  1. 職場で公然と男女関係を匂わせる
  2. 愛人である部下を不当に優遇する
  3. 愛人である上司の権力を利用する

 

2番目は具体的に言うと、失敗をかばう、つらい職務を免除する、能力不相応なポジションにつけるなどです。

 

ここまで来ると、一刻も早く除去しないと士気への影響は深刻になります。

 

ただ、この「士気への影響」は、裁判とかになってしまった時に「会社の実損害」として立証するのは、かなり難しいということも承知しておく必要があります。

 

つまり短絡的に懲戒解雇すればいいというものではないということです。。

 

社内不倫が始まるきっかけ

では、社内不倫はどんなできごとをきっかけに始まるものなのでしょうか?

 

代表的なものは下記です。

 

  • 2人きりでご飯(飲み)に行く
  • 会社の飲み会の後で2人きりになる
  • 残業で2人きりになる
  • 相談を受ける
  • 告白される
  • 同じチームに配属される

 

社内不倫が発覚するきっかけ

一方、不倫が社内バレするきっかけは次のようなものです。

 

  • 会話の雰囲気や距離感でバレる
  • 相談した同僚が言いふらした
  • メールのご送信やLINEを見られて
  • SNSで2人の写真を上げたら見られた
  • 社外で一緒のところを見られた
  • 有給や残業が被りすぎ

 

懲戒処分にすべきか?

この問題に遭遇した時、懲戒処分を検討される経営者も少なくありません。

 

たしかに事の程度によっては許せない気持ちもわかります。

 

しかし、相手が抗戦してきた時、勝てるかどうかは微妙です。

 

法的には不倫はプライベートな問題であり、基本的に会社には関係ないことだからです。

 

訴訟で懲戒処分が適切だったと認められるためには、不倫行為が会社に損害を与えたことを証明する必要があります。

 

しかし、それは容易ではありません。

 

例えばある社労士は、不倫が原因の懲戒解雇を不服として争われた3つの判例を取り上げています。

 

 

@長野電鉄事件(昭和45年)

妻子ある観光バスの運転手が未成年のバスガイドを妊娠させたため懲戒解雇され、提訴。
裁判所は会社の信用や実務上の損害を認め、会社は勝訴した。

A繁機工設事件(平成元年)

男女社員の不倫が発覚、社長は二人にやめるよう説得したが、応じないので「社内の風紀を乱した」として、女性社員を懲戒解雇。女性社員はこれを不服として提訴。
裁判所は、就業規則にある「職場の風紀・秩序」を乱した具体的事実が確認できず、プライベートな問題で懲戒解雇はありえないとして、解雇無効の判決。会社は敗訴

B池田高校事件(平成2年)

妻子ある高校教師が教え子と在学中に交際し始め、卒業後に男女の仲になり、懲戒解雇。
裁判所は教職という立場の社会的影響を考慮し、会社が勝訴の判決。

 

@では会社勝訴ですが、昭和45年だからずいぶん昔の話です。

 

従業員の権利意識や性道徳も変化した現代でも同様の判断が下されるのか?

 

平成元年のAでは会社が敗訴しています。

 

類似の判例として挙げているBでは解雇有効の判決ですが、社会的影響の大きい教育者の場合はちょっと事情が異なると思います。

 

というわけで、懲戒処分をしても自動的に会社の勝訴となるわけではないので、まずは予防策など基礎から固めていく必要があります。

 

そして必要な時は合理性と納得感を持って懲戒処分を行えるような環境整備から始める必要があります。

 

会社が取るべき対策

(株)マイナビが運営するHuman Capitalサポートネットでは、社内不倫に対して人事が取り組むべき対策を提案しています。(当該ページ

 

対策1 問題の予防

「社内恋愛禁止」のようなルールは反感を買うだけで、合理的で納得性の高い策を打つべきです。

 

予防策1:就業規則の整備

就業規則の罰則・懲戒系の項目に「公序良俗に違反した場合」「社内の風紀・秩序を乱す行為をした時」といった文言を入れておくこと。

 

懲戒処分を行わねばならない時の根拠として必要です。

 

予防策2:社員教育の徹底

階層別研修などで、「社内恋愛」「社内不倫」について具体的なトラブル事例・懲戒事例なども交えつつ、会社の取り組みを説明します。

 

予防策3:社内通報制度(ホットライン)の整備

社内不倫ではいったん関係が崩れると、社内で立場の強い方がセクハラ・パワハラを行うトラブルに発展しがちです。

 

問題が起きた時はノーリスクで通報できて、第三者が公平な観点で調査できる仕組みを作っておきます。

 

対策2 問題発覚後の対策
原則1:社内の立場が強い方に異動を伴う処分をする

いまだに女性の方を退職させると自動的に判断する会社が多いですが、間違っています。

 

弱い方を処分すれば社内の不信感が高まるし、強い方は問題を起こしても自分は安泰と考えてまたやります。

 

強い者を処分することで皆が納得し、会社を信頼し、強い立場の者は自分を戒めます。

 

原則2:処分は迅速・内密に

不倫の事実を公式に公開すべきではなく、わかりやすい別な理由をつけて配置転換します。

 

知っている人は知っています。

 

意思決定が長引くと別なトラブルが発生しやすいので、迅速に済ませます。

 

探偵の活用

上記の提案は妥当だと考えますが、したたかで強硬な抵抗が予想される相手なら、探偵を使って先に動かぬ証拠を押さえてしまう手もあるでしょう。

 

外部から招いた役員がそういうことをしながら、一部門を支配しているような場合です。

 

探偵社には社内不倫の浮気調査の依頼が時々来ます。

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