「探偵を使いたいが、怖い世界だという噂もあるので心配だ」という方は多いです。
悪徳探偵はどんな被害があるのか?
そういうハズレを引くのを避けるにはどうすればよいのか?
そういうお話をします。
はじめに今よりずっと悪徳探偵の被害がひどかった時代の話をします。
日本に探偵業が誕生したのは明治時代です。(参考 探偵業界の歴史)
それ以来、比較的最近(平成19年 2007年)まで探偵を規制する法律は何もありませんでした。
もちろん住居侵入などは、一般人同様に罰せられました。
しかし、探偵を直接対象にした法律は皆無でした。
探偵業の開業には、今も昔も資格・免許の類は不要で、実務経験がなくても法律上は問題ありません。
現在は公安委員会への届出が必要ですが、探偵業法以前はぞれもありませんでした。
しかも設備投資や仕入れが不要で開業費用が小さいため、参入が簡単です。
そのため、探偵業者の数はどんどん増加しました。
野放し状態で何が起きるかは目に見えています。
調査技術が高く、顧客に尽くす探偵もいました。
しかし、質の低い探偵や悪徳探偵の方がはるかに多かったのです。
消費者のクレームは増える一方で、被害も極端なものがありました。
最初の3例は今はほぼないですが、お金だけ取って実地調査しないとか、法外な追加請求はいまだに時々耳にします。
とにかく、昭和の終わりから平成の前半にかけて、消費者クレームは激増。
同時に調査される側の人権問題も取り上げられるようになりました。
おびえているのに執拗に追い回すなどの行為も横行していたのです。
悪徳探偵の被害は社会問題になっていきました。
そこで探偵を規制する法律を作ろうという動きがでてきました。
お役所も警察も腰が重いので、議員立法で進められました。
中心になったのは、後に法務大臣になった葉梨衆議院議員です。
この法律の立法経緯や各条の意図は、葉梨氏の著書「探偵業法」に詳述されています。
残念ながら廃刊で中古本は高騰しています。
この本に興味はあるが、原典に当たる必要まではないとお考えの方は、当サイト収録の要約をご利用ください。
こうして「探偵業の業務の適正化に関する法律(通称 探偵業法)」が2006年に成立し、2007年に施行されます。
法律の内容は、消費者(=依頼者)の保護と調査される側の人権保護です。
探偵業法は探偵業界のための法律ではなく、一言で言うと「悪徳探偵の被害を防ぐ法律」です。
悪徳探偵の被害防止に関係の深い部分だけを抜粋して紹介します。
この法の中で探偵業の開業には公安委員会への届出が義務付けられました。
届出はお役所の許認可の中では一番簡単なもので、書類が揃っていれば受理されます。
(ただし、後で警察に「欠格事由に抵触しない」という誓約書に嘘がないかチェックされますが。)
だから届出証は探偵の能力を保証するようなものではありません。
国家資格や免許のような信頼性はありません。
しかし、探偵業法以前は業界の実態について、正確なことが何もわからなかったのです。
どこにどんな探偵社があって、役員は誰で、全国に合計何社あるのか、といったことです。
それを思えば大きな進歩です。
欠格事由、つまり探偵業を営んではいけない者のリストが定められました。
その中には「暴力団員又は暴力団員でなくなった日から五年を経過しない者」が含まれています。
さらに暴力団が届出業者の名義を借りて経営することもできません。
これでヤクザがバックの探偵社はひとまず排除できました。
重要事項の説明が義務付けられたことも、大きな改善でした。
不動産取引、語学スクールや美容サロンの長期プラン販売の時と同様のものです。
提供業務の内容、料金、キャンセル条件などを契約前に説明し、書面で交付する義務があります。
これで契約が安全になりました。
世の中には罰則がない法律もありますが、努力義務では機能しません。
探偵業法では、報告義務、立入検査、営業停止、廃業命令、罰金、懲役刑などについても定められています。
この法律ができてから悪徳業者の多くが廃業に追いやられました。
今は探偵への依頼はずいぶん安全になりました。
それでも小さなトラブルは後を断ちません。
今は罰則があるため、届出済の合法業者では悪質な行為は減っています。
調査で得た秘密をネタにゆするとか、秘密を売るようなことはそんなに心配しなくて大丈夫です。
ほかのタイプの被害について紹介しましょう。
積極的な悪意まではないが、プロと呼べないレベルで、仕事のできはひどい。
そういう例なら今も非常に多いです。
探偵業は届出だけで開業でき、資格も試験も免許もありません。
あなたも開業の前日までに地元の公安委員会に届出(ただし警察経由で提出するルール)を出せば始められます。
つまり実務能力の認証システムがまったくないわけです。
民間資格はいくつかあるが、普及していません。
だから経験不足でスキルの低い探偵が山ほどいるのです。
統計を取り始めて以来、業者数は一貫して増えており、令和3年末では6,600社を越えています。
副業探偵とか、完全に未経験なのに届出をしている人もいます。
下記に探偵になる道にどんなものがあるか整理した記事があります。
興味がある方は読んでください。
しかし、探偵はそんなに簡単な仕事ではなく、ものすごいスキルと経験が必要です。
そして仕事を取るのもとても大変です。
すると仕事欲しさに到底採算が取れないような金額での受注に走りがちです。
そうやって仕事が取れても、スキルが低いので失敗したり、すごく低品質な結果に終わることが多い。
それでも生きていくために請求だけはする・・・
このように悪徳というほどではないけれど、能力とモラルの低い業者は多い。
そういうのに当たって、ひどい目に遭う可能性は今も結構あるのです。
成功報酬は調査が失敗した時は払わなくていいので魅力的に見えます。
しかし、成功の定義があいまいなために揉めることが多いです。
つまり「何をもって『成功』とみなすのか?」ということです。
調査の種類との相性もあって、人探しは比較的合うが、浮気調査は微妙な気がします。
例えば、浮気調査はどこまでやって成功ですか?
普通は3が成功です。万が一訴訟になった場合に使える証拠を押さえるのが通例だからです。
しかし、探偵社との話し合いであなたが1か2で十分と思うのなら、それでもかまいません。
困るのは、あなたは3が当然と期待しているのに、探偵が1や2で「成功」と主張してくる場合です。
一方、異性と会ってはいたが、ホテルには行かなかった場合はどうなるのでしょう?
あるいは、そもそも誰とも会ってない場合は?
最後まで尾行できたなら、探偵に責任はないです。
これは成功なのでしょうか、失敗なのでしょうか?
はじめに決めておかないと絶対にもめます。
成功報酬を採用するなら、契約前にこうした問題について十分話し合っておいてください。
でないと、何でもかんでも「成功」として請求され、腹を立てることになります。
一方で最初から成功するつもりのない成功報酬というものもあるようです。
例えば、成功報酬が60万円、失敗した場合は経費分として2割の12万円だけ払う契約をします。
調査はまったくせず、失敗を報告して、最初からこの12万円だけを狙っていくのです。
悪徳探偵というより、探偵詐欺と呼ぶべきかもしれません。
探偵は警察のような捜査権はなく、法令違反は一般の人と同様に罰せられます。(探偵業法第六条)
例えば、撮影や盗聴器設置のために他人の敷地に入ると住居侵入罪です。
こうした探偵の違法行為に依頼者も関与していた場合、探偵だけでなく依頼者も処罰されます。
GPSを無断で他人の車に装着させてはいけません。
探偵の提案であっても、あなたの要求であっても。
この種のトラブルで多いのは戸籍情報の不正入手。
弁護士・司法書士・行政書士などは、職務権限で戸籍情報の取り寄せができます。
悪徳士業と提携した探偵社が、高額で不正入手を提案してくる場合があります。
これには絶対乗ってはいけません。
発覚すると貴方も処罰され、名誉に傷がつきます。
探偵社には定期的に「戸籍情報の不正入手をするな」という警察のお達しが回ってきます。
通常の合法調査で分かる以上のことが戸籍情報でわかることは少ないです。
こういうハイリスク・ローリターンな提案をする探偵社は付き合わない方がいいです。
最近、ホームページだけでオフィスが実在しない探偵社にお金を騙し取られる被害が出ています。
これは悪徳探偵の被害というより探偵詐欺と呼ぶべきかもしれません。
探偵社の事務所に行くのはちょっと怖い人も多いですが、コロナ流行期はこれに感染の恐怖が加わりました。
そこで依頼者の近所までこちらから出向きましょうと提案するわけです。
近所のカラオケボックスなどで契約を交わし、お金を払うと連絡が途絶えます。
いわゆる、やらずぶったくりです。
オフィスの有無は実際に行って確認するのが一番。
確かに探偵事務所に行くのは怖いかもしれません。
しかし、見方を変えれば、企業としてどうなのかを見極めるいい機会です。
飲み屋街や風俗街そばの怪しいテナントだらけの雑居ビルの一室なのか?
もう少しまともそうなのか?
届出証は掲示しているか?
オフィスの整理整頓清潔や従業員のマナーはどうなのか?
ホームページは好きなように作文できます。
それを鵜呑みにせず、実体を自分の目で確認することをお勧めします。
大手有名社ならリモート相談・出張相談も可ですが、小さい会社はぜひ実地確認した方がいいともいます。
ここまで探偵業界の実態や悪徳探偵の手口を見てきました。
では、そういう被害を避けて、良心的で腕のいい探偵と巡り合うにはどうすれば?
いくつか提案をさせていただきます。
知識がまったくなければ、いいように言いくるめられてしまいます。
難し考えなくても大丈夫。
このページを読んだだけでも次のような知識を得たはずです。
例えばこのサイトの他のページでもいろいろな情報を紹介しています。
一般的な探偵の仕事は、浮気調査7割、人探し2割、その他1割とか。
浮気調査、人探し、結婚相手の調査の仕方とか。
浮気調査をなるべく安く済ませるコツとか。
基礎知識が身に着けば、探偵社に自信を持って不明点を問いただせます。
まずはランキングサイト上位の会社、「浮気調査 おすすめ」などの検索で上位に出てくるような会社を観察してみましょう。
そういうところは全部法人ですし、届出も済ませていますし、住所も間違いないはずです。
しかし、練習のために確認してみるのもいいです。
「会社名 法人番号」で検索して出てくる登記住所とホームページの住所が一致しているか見ればいいです。
サービス名(ブランド)と運営会社の名前が違う場合があるので注意してください。
近所なら現場を見に行ってみるのが一番です。
ホームページに届出番号が記載されているはずですし、事務所には届出証明書が掲示されています。
届出は、本社・支社・営業所・相談室などのすべてについて、それぞれの地元の公安委員会に出すことになっています。
届出の有無は、各地元警察の生活安全課に問い合わせれば確認できます。
【総合探偵社クロル埼玉拠点の届出証】
クロル社は本社池袋ですが、埼玉拠点の届出証は東京都公安委員会ではなく、埼玉県公安委員会の発行です。
何か問題があった時にすぐに調査行動が取れるよう、各拠点の地元の公安委員会の管轄になっています。
届出証は、相談室の壁や受付のカウンターなど、見やすい場所での掲示が義務付けられています。
ただ、すでにおわかりのように、届出はしているのが当たり前です。
無届なら関わってはいけない危険な違法業者です。
届出は書類が揃っていて欠格事由に抵触しなければ自動的に受理されます。
届出をしていたところで全国6,600社以上の中のひとつというに過ぎません。
危険確定の違法業者ではないだけで、大した安心材料ではありません。
業界団体に所属している探偵社なら安心と説くサイトもあります。
社団法人日本調査業協会 |
内閣総理大臣の許可を受け、警察庁を監督官庁とする業界最大の団体。 |
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NCIA全国調査業協同組合 |
大手の原一探偵事務所などが所属する内閣総理大臣認可法人 |
特定非営利活動法人 |
さくら幸子探偵事務所など30社弱が所属 |
上記のようなメジャーな団体なら一定の安心材料になるとは思います。
大手の幹部から、金を払えば誰でも入れるわけではなく、加盟の是非は理事会決議と聞いています。
そして、その趣旨は組織防衛のために輩のような連中を加盟させないことだ、と。
その場合、一定の安心材料になります。
しかし、業界団体は非常にたくさんあります。
わずか数社で団体を作ってさもすごい団体のように謳っている場合もあります。
どの団体がちゃんとしていて、どの団体がそうでないか、消費者にはわからないでしょう。
だから、業界団体のメンバーというのは参考材料程度だと思います。
ある程度有名な探偵社なら、ここまで述べたようなことは当たり前にできています。
むしろ、次のような点に注意して読んでみてはどうかと思います。
上記のような作業でいろいろなサイトでよくみかける大手ないし有名社を選んでもいいです。
または地元のもう少しこじんまりした会社で、ホームページの内容に共感できる会社を、上記のようなチェックを済ませて選んでもいいでしょう。
実際にオフィスに足を運んでみましょう。
最初は緊張するでしょうが、何社か回れば落ち着いてみる目ができてくるはずです。
「A社は高圧的に契約を迫って来て、その時はそれが普通なのかなと思いかけた。」
「ところがB社は親身でどんな質問にも答えてくれて、全然圧力をかけてこない。」
・・・といった発見があるはずです。
わからないことや疑問点は納得できるまで徹底的に聞いてみてください。
そこであいまいな答えをしたり、高圧的に出たり、契約を急かす探偵社はやめておきましょう。
親身でどんな質問にも答えてくれる探偵社を選べば、被害に遭うことはないはずです。
下記のページには相談~契約~調査実施までの流れをまとめてあります。
先にこれを理解して訪問に臨むといいでしょう。
そうは言ってもやはり探偵社の数が多すぎて選べないという人もいるでしょう。
ホームページの記述を読んで、良さそうな会社、自分と合いそうな会社を判断するのも難しい、と。
押しに弱いので下手に会いに行ったら1社目で決められてしまいそう、それが悪徳探偵社だったら怖い、という方も。