会社の秘密漏洩行為の摘発

企業における不祥事や詐欺をはじめとする諸問題と、探偵を活用した解決方法を考察していくコーナーです。

 

今回は最近の企業秘密漏洩事件について考えます。

 

解決には総合的な取り組みが必要です。

 

最近の事例

まずは時期を最近に絞ってどんな事件が起きているか見てみましょう。

 

実はかなりたくさんの事件が起きていて、ここに収録したのはごく一部であることを最初にお断りしておきます。

 

盗み出される情報は、大きく次の3種類があるように見受けられます。

 

盗まれる秘密情報の類型
  1. 顧客の個人情報
  2. 製品の情報やサンプル
  3. 経営方針等の情報

 

1.個人情報が漏洩された事件
2019年 アークレイ患者情報漏洩事件

医療検査機器製造・販売を行う同社で、退職予定だった従業員が医療機関から提供された患者情報をUSBメモリで不正に持ち出した。

 

会社は犯人を懲戒解雇、刑事告訴した。

 

2014年 ベネッセコーポレーション顧客情報漏洩事件

進研ゼミなどを運営する同社で、従業員が売却目的で顧客情報を漏洩。

 

その後、東京高裁は被害者1人当たり3,300円の損害賠償を命じたが、人数が多かったため、総額は莫大な金額に上った。

 

2.製品情報が漏洩された事件
2019年 NISSHA製品情報漏洩事件

電子部品製造大手の同社の元従業員がスマートフォンなどに使用されるタッチセンサー情報を不正に複製持ち出し。

 

同社を退職後、中国にある競合会社で働いていた。

 

2019年3月 アシックス靴情報漏洩事件

主力商品の靴の品質データを持ち出した元社員を逮捕。

 

退職後に別のスポーツ用品メーカーに就職していた。

 

2016年 日本ペイント製品情報漏洩事件

の元役員が同社の主力商品の営業秘密を複製し、USBメモリに保存して持ち出した。

 

子会社出向を経て退職後、ライバル社の顧問に就任。

 

元役員は不正競争防止法違反(営業秘密の開示)の疑いで逮捕、起訴され、懲役(執行猶予付き)と罰金刑を受けた。

 

3.経営の情報が漏洩された事件

これは明確に何かの法令に違反すると断定しにくい場合も多く、被害者の企業の方も隠したがるのでニュースになりにくいです。

 

企業の側もやましい事がある場合が多いのです。

 

少し古いですが、いい例が「こんなにおもしろい調査業の仕事」という本に出ていたので紹介します。

 

社内不祥事の漏洩と恐喝事件

あるビル・エスカレーターの管理会社で、点検をしていないのに実施済の報告をしていた不祥事が発生。

 

外部者がこの事実をつかんで会社を訪問し、脅迫してきた。

 

会社は探偵を使ってこの男の所在調査、行動調査を実施したところ、元社員との面会が確認された。

 

警備会社での裁判方針漏洩事件

ある警備会社が職務怠慢な女性を解雇したところ、不当解雇として提訴してきた。

 

そして業務課長の携帯置き忘れから、彼が女性に会社の裁判対策を漏洩していることが判明した。

 

行動調査により二人の複数回の接触と男女関係の証拠が取れた。

 

外国のスパイが関与していた事件

特殊なものとして、ロシアや中国が関係していた事件もあります。

 

2019年 中国人技術者による横領事件

大手自動車部品メーカーに勤務する中国人技術者は、約130万件もの電子図面データをダウンロードした社用パソコンを不正に持ち出していた。

 

愛知県警察は同人を横領罪で逮捕。

 

2017年 ロシアによる軍事転用可能技術情報の盗難事件

電子部品メーカーの元会社員が、ミサイルの制御や誘導に転用可能である可変光減衰器(VOA)素子1個を窃取した。

 

在日ロシア通商代表部員との共謀だったことが判明。

 

警視庁は、翌年に両人を窃盗罪で検挙した。

 

対策の考察

インターネット&デジタルの時代になって、秘密漏洩行為の摘発は大きく難易度が増しました。

 

アナログの時代なら、情報はファイルの持ち出しという物理的作業を伴い、視覚情報も使っての面談は実際に会わないとできなかった。

 

しかし、今は電子ファイルで情報を送れるし、ビデオ会議もあります。

 

物の持ち出しや不審人物との面会など、他者が見てわかる行動を一切取らずに、共謀して秘密を盗み出すことも可能です。

 

会社のコンピュータにネットから侵入して情報を盗むという、人間が目に見える形ではまったく介在しない方法もあります。

 

探偵の行動調査や定点観測だけで解決できる範囲は狭くなったと言えるでしょう。

 

探偵の方もデジタルフォレンジックの企業と提携したり、進化が求められています。

 

とはいえ、キーマンがハニートラップにかかって不正を唆されている場合をはじめ、行動調査が決め手になるような場合は確かにあります。

 

そして、それができるのは探偵だけです。

 

秘密漏洩の予防対策と発生時の対策においては、トップが主導してシステム部門、法務部、総務部などを相互協力させて総合的に進める必要があります。

 

探偵もその一員という位置づけで動くべきです。

 

企業の方もいざという時に使える探偵を見つけておくべきでしょう。

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