
インターネット上で恋愛感情を装い、信頼関係を築いたうえで金銭をだまし取る「ロマンス詐欺」が、国境をまたぐ形で活発化しています。
この「国際ロマンス詐欺」は、恋愛という人間の感情を巧みに利用するため、被害に遭うと心理的なダメージも非常に大きくなりがちです。
日本でも、2024年にはロマンス詐欺・投資詐欺を含むSNS経由の犯罪で、被害額が急増したというデータがあります
(出典:日本データ「Financial Losses Soar as Cases of Scams Jump in Japan」)【出典:turn0search14】。
本記事では、国際ロマンス詐欺の実態を俯瞰しつつ、被害に遭いやすい人の特徴、典型的な手口、犯行が活発な地域、具体的な被害事例、被害後の対策、そして予防策までを整理します。
この記事を通じて、「もしも自分や知人が同じ状況になったらどうすべきか」を具体的にイメージできるようにしておきましょう。
国際ロマンス詐欺とは、インターネット(SNS、マッチングアプリ、チャットアプリ等)を通じて異性(または異性を装った者)と出会ったと信じさせ、恋愛・結婚・将来の共同生活などをほのめかして信頼を得た後、金銭の提供を求める詐欺です。
海外在住を装ったり、海外送金・暗号資産など国際的な決済手段を使わせたりすることで、捜査・返金ともにハードルが高くなっています。
このタイプの詐欺は「Romance Scam」「Love Scam」とも呼ばれ、恋愛を通じた信頼関係の構築とそれを利用した金銭詐取の構図が典型です。
(出典:turn0search30)
被害者に対して「相手が海外在住/海外在住を装っている」「送金先が海外口座・暗号資産ウォレット」「言語やタイムゾーンにズレがある」などの特徴があり、これが「国際」の要素を持つ大きな理由です。
国際的に拠点をまたいで犯罪を組織化している場合も多いため、通常の国内詐欺に比べて、被害救済・加害者特定・捜査ともに難易度が上がっています。

日本国内のデータでは、ロマンス詐欺・SNS経由詐欺を含む特殊詐欺の被害では、40代〜70代の中高年層の割合が高まっており、特に被害額や被害件数ともに「年齢層が引き上がっている」という指摘があります(出典:turn0search16) 。
また、2024年の報道では、ロマンス詐欺の被害件数が3,784件に上り、前年から2,209件増加したというデータもあります(出典:turn0search10) 。
被害に遭いやすい人の心理的な特徴として、「日常的に孤独感や寂しさを抱えている」「近しい人との交流が減少しており、新しい出会いを求めている」「SNS/マッチングアプリを利用しているが、詐欺的な手口に対する知識が十分ではない」といった点が挙げられます。
また、経済的には大きな困窮状態ではないものの、「これから人生をリセットしたい」「もう一度誰かと出会いたい」というタイミングで、詐欺側の甘い誘いに乗ってしまうケースが少なくありません。
重要なのは、「だまされやすい人」だから被害に遭うというわけではなく、詐欺側が巧みに信頼を築き、感情を揺さぶる構造を持っているという点です。
むしろ、誠実で真面目な人ほど「自分が信じたい」「この人を助けたい」という気持ちが逆手に取られることがあります。
被害に遭った方を非難せず、まずは「誰でも遭い得る」リスクとして捉えることが大切です。

詐欺師は、まずSNS(Facebook・Instagram・TikTok等)・マッチングアプリ・語学交流アプリ・オンラインゲーム内チャットなどに接触してきます。
最初は「共通の趣味」「海外出張中」「語学パートナー」などを名目にし、会話を始めます。
その後、「たまたまあなたの投稿を見た」「ずっと探していた人に似ている」などの形で、心理的に距離を縮めていきます。
典型的には、高収入・社会的地位の高い職業(医師、エンジニア、軍人、石油会社従業員など)を装っており、「現在海外で勤務/出張中」「〇〇国の研究施設にいる」などの設定が用いられます(出典:turn0search1) 。
また、写真はモデルや俳優を無断使用・あるいはディープフェイク技術で加工されている場合もあります(出典:turn0search16) 。
詐欺師は綿密にメッセージを送り、毎日こまめに連絡を入れたり、将来結婚したい・会いに行きたいといった甘い言葉を使ったりします。
被害者が「この人だけに」なってしまうように心理的に誘導されることが多く、典型的には複数年にわたる信頼構築フェーズを経てから金銭要求に移ります(出典:turn0search1) 。
さらに、組織的な詐欺グループではメッセージ内容がマニュアル化されており、役割分担(チャット担当・送金口座用意担当・逃走担当など)がなされているという報告もあります(出典:turn0search18) 。
信頼関係ができあがった後、被害者に向けて次のような名目で金銭を要求することが頻繁にあります:
このように少額から始まり、出金できたという“演出”を挟み、さらに「もっと大きなお金を入れないと損をする」「ここで踏み切らなければあなたとの未来がなくなる」といった心理的圧力がかかります(出典:turn0search4) 。
最近では、恋愛要素に加えて「高利回り投資」「暗号資産」「副業案件」といったキーワードを絡ませた詐欺が急増しています。
いわば「ロマンス詐欺 × 投資詐欺」のハイブリッド型で、恋愛という心理的信頼を入り口に、投資案件へ誘導するパターンです(出典:turn0search14) 。
このタイプでは、「一緒に将来資産を作ろう」「君のために稼いでいる」といった言葉が使われ、被害者は恋愛+経済的期待の二重の罠にハマっていきます。

1980年代〜90年代にかけて、いわゆる「ナイジェリアからの手紙」形式の419詐欺が世界的に知られるようになりました。
この流れから、ナイジェリアでは若者が詐欺に従事する「ヤフーボーイ」として社会問題化しました(出典:turn0search1) 。
その後、手口・媒体が変化し、インターネット・SNSを使ったロマンス詐欺という形で世界中に広がっています。
現在ではナイジェリアだけでなく、ガーナ等の西アフリカ諸国を含めて詐欺組織が展開され、「養成所」「訓練所」のような施設があるという報告も出ています(出典:turn0search1) 。
こうした施設では、詐欺手法・口座開設・送金ルート確保などが“教育”されており、詐欺側の組織化・大規模化の一因となっています。
さらに、ロマンス詐欺・投資詐欺を含むSNS型の詐欺は、東欧・アジア・北米など複数地域から仕掛けられており、被害者の国籍・言語・送金手段を分散させることで摘発を回避する構造が指摘されています(出典:turn0search18) 。
つまり「拠点が海外」「被害者が日本」「送金もグローバル」という構図が、国際ロマンス詐欺の特徴となっています。
漫画家で「レディコミの女王」と呼ばれる井出智香恵さんが、2018〜2021年の3年半にわたって国際ロマンス詐欺に遭い、総額約7,500万円をだまし取られたという事例があります(出典:turn0search1) 。
彼女は、俳優マーク・ラファロ(『アベンジャーズ』のハルク役)に成りすました人物からSNSで接触され、ビデオ通話で“本人らしき”映像が送られて信頼が築かれた後、「妻との離婚調停中で自分のお金が使えない」などの理由で送金を迫られたとのことです(出典:turn0search1) 。
この例は、たとえ知名度のある人物・活躍中のクリエイターであっても、詐欺のプロセスに巻き込まれうるということを示しています。
日本での実態では、被害額・件数ともに増加傾向にあります。例えば、2024年には日本国内でロマンス詐欺・投資詐欺を含むSNS関連犯罪の被害が、約1,268 億円に上ったと報じられています(出典:turn0search10) 。
また、平均被害額が1,000万円を超えるケースも少なくないという報告(出典:turn0search8) 。
詐欺手口も「戦地の兵士」「海外投資家」「著名人」「遺産相続」など多様化しており、被害者は「出会いを楽しみたい」「一緒に将来を築きたい」と思った瞬間に罠にかかってしまいます。
被害を受けた後に、「お金を取り戻すために別の業者に相談したらさらにだまされた」「返金代行という名目で追加出金を迫られた」といった二次的な詐欺リスクも報告されています。
被害直後から冷静な相談窓口を確保しておくことが重要です。

送金を止める:金銭のやりとりを即座に停止してください。
連絡を中断する:詐欺相手との連絡をできるだけ断つことが重要です。
証拠を保存する:メッセージのスクリーンショット、送金履歴、使用したチャットアプリ名・URL・相手のアカウント情報などをできる限り保存してください。
銀行・暗号資産取引所に相談:送金直後であれば口座凍結や払い戻しの可能性があります。
警察:日本国内では「#9110(迷惑・不審電話相談窓口)」や各都道府県警察のサイバー犯罪相談窓口があります。
消費生活センター:消費者ホットライン「188」を使って相談可能です。
弁護士:被害を受けた後の損害賠償請求、加害者の特定支援などを行うことができます。ただし、海外との関係がある事案では回収が困難な場合も多いです(出典:turn0search4) 。
加害者の口座に資金が残っていれば、振り込め詐欺救済法に基づき分配金が支払われる可能性があります。
また、銀行が一定の条件で返還対応をする場合もあります。
ただし、既に口座から出金されていたり、暗号資産に変えられていたりすると、実質的に回収は極めて難しいです。
詐欺師が海外拠点を使い、暗号資産やギフトカード経由で送金を受けているケースでは、回収の可能性は非常に低くなります
警察捜査や国際協力を経ても、実際に返金されたという事例は稀です(出典:turn0search16) 。
「絶対に取り戻せる」とうたう返金代行業者には特に注意が必要です。

国際ロマンス詐欺は「恋愛」という感情を入り口に、信頼構築→金銭要求という順で巧みに進行します。
しかも国境をまたいだ構造/暗号資産等の技術利用により、被害回復が極めて困難なケースも多いのが現実です。
「もしも自分が被害に遭ってしまったかもしれない」と思ったら、すぐに送金を止め、証拠を残して、信頼できる公的機関・専門家に相談することが被害の拡大を防ぐ鍵となります。