家出人捜索のローラー調査のやり方|プロ探偵の調査技術 ネットカフェや街中を人海戦術で

家出人捜索のローラー調査のやり方|プロ探偵の調査技術 ネットカフェや街中を人海戦術で

ローラー調査

大手有名探偵社への訪問取材を繰り返す中で教えてもらった調査技術のエッセンスを紹介するコーナーです。

 

今回はローラー調査の話です。

 

これは探し人がいそうな場所を手分けしてしらみつぶしに探す調査です。

 

 

ローラー調査が行われる場合

主に家族の依頼で家出人を探す場合で、次の条件を満たす時に用いられます。

 

  1. 明確な行先の手がかりがないこと
  2. 遺書をはじめ自殺の兆候はないこと
  3. 家財道具・大量の私物を持ち出しての計画的な家出ではないこと
  4. いなくなってまだそんなに日数が経っていないこと

 

家出人が部屋に残した物や友人の証言などから行き先が推定できる場合は、もちろんそこを優先的に探します。

 

自殺の危険がある家出人は、探す場所も探し方も全然違います。

 

 

家財道具や大量の私物を持ち出している場合は、次の住所がすでに決まっているということです。

 

普通の家出人がよく行くような場所にはいません。

 

しかも家族に新住所を告げていないということは、探してほしくないということであり、足跡を慎重に隠滅していることが予想されます。

 

こういう相手を探すのは難しく、探し方も別の方法になります。

 

いなくなってから、何カ月とか何年も経った人を探す方法もまた別になります。

 

ローラー調査の捜索先

まず捜索先をたくさん挙げて、かつ優先順位がつけられないとローラー調査はできません。

 

計画的でない家出の場合は、ネットカフェや漫画喫茶に行くことが多いのですが、世の中には莫大な数があります。

 

一方、調査に投入できる人員・予算・時間には限りがあります。

 

どの町のどの店から始めたらいいか、一定の根拠を持って指定できないと、発見できない可能性が高いです。

 

ここでものを言うのが、捜索経験の豊富さとデータの蓄積です。

 

業界大手の原一探偵事務所の取材で聞いた話を紹介します。

 

東京都近県の家出人

埼玉・群馬・茨城などの東京都近県の家出人が県内に留まっているケースは稀で、たいてい都内に出る。

 

滞在先で多いのはネットカフェ、マンガ喫茶で、場所は池袋、新宿、上野、秋葉原が多い。

 

上野や秋葉原はレトロな雰囲気の下町で、田舎から出てきた人にも居心地がよい。

 

秋葉原はサブカルチャーの聖地で、オタク的な人には天国のような場所。

 

池袋は埼玉と東京をつなぐ街で馴染みがあり、女子オタクの聖地・乙女ロードもある。

 

新宿の猥雑な雰囲気も家出人には居心地がいいが、怖い街だと思う人もいる。

 

渋谷はおしゃれな街で滞在するにはまぶしすぎるが、観光でうろうろしているのを発見できる可能性は十分ある。

 

(原一探偵事務所 本社 探偵A氏 談)

 

四国および四国に向かった家出人

四国八十八カ所霊場は主要な行先のひとつ。

 

当社では4つのエリアに分けてデータを蓄積している。

 

簡易宿泊所、民宿、ホテル、お寺などすべて把握している。

 

参考: 四国のお遍路宿

 

捜索に協力をお願いして、発見できた場合には、必ず後日お礼に行く。

 

すると「本当に家族のために家出人を探している良心的な探偵社なんだ」と納得してくれて、次回から積極的に協力してくれるようになる。

 

長年それを続けていくことで、そういう協力的な宿やお寺が増えていく。

 

するとローラー調査の精度やスピードはますます向上していく。

 

こういうことは一朝一夕にはできない。

 

(原一探偵事務所 松山拠点 探偵S氏 談)

 

車を使う田舎の家出人

田舎の住民が車で家出した場合は、道の駅やパチンコ屋の駐車場をローラー調査する。

 

駐車している車は時間とともにどんどん入れ替わっていく。

 

一度チェックした場所も飽きずに二度三度調べることが大切。

 

(原一探偵事務所 本社 探偵K氏 談)

 

ただ、原一さんの家出人捜索専門部隊(調査部特捜課)に取材した時は、家出人の行き先に新しい傾向が出ているという話も聞きました。

 

東京の家出人が沖縄のシェアハウスで見つかった例が出たというのです。

 

参考: 沖縄の人気シェアハウス

 

さらには、大阪釜ヶ崎のドヤ(ヤドの逆の隠語で、日雇い労働者用の安宿を意味する)で東京の女子大生が見つかった例も。

 

釜ヶ崎といえば、昭和の時代は日雇い労働者の街。

 

街中にホームレスの立小便の臭いが立ち込め、大規模な暴動が起きたこともあるガラの悪い場所です。

 

昔はとても若い女性が足を踏み入れられるような場所ではなかったのです。

 

しかし、時代とともに建設の仕事が減り、日雇いの仕事も減り、ドヤも他の客層を開発しないと生きていけなくなりました。

 

ドヤ経営者の2代目・3代目はネットで海外のバックパッカーを集客し、街の雰囲気は一時は人種のるつぼの様相を帯びていました。

 

そんな様子が国内の若者も惹きつけ始めているのかもしれません。

 

コロナで激減した外人客が戻ってきたら、再びあの状況になるのでしょうか?

 

参考サイト: あいりん地区の安宿

 

こんなふうに地方に低額で滞在できる場所が増え、価値観も東京一辺倒ではなくなってきたことが、家出人が地方に向かうことの背景にあるようです。

 

家出人の典型的な行先も、時代とともに少しずつ移り変わっていくということです。

 

だから家出人捜索は、常に家出人捜索を請け負ってローラー調査先をアップデートしている探偵社に依頼すべきです。

ローラー調査による失尾のリカバリー

尾行途中にターゲットを見失う失尾は、あってはならないことですが、そこは人間のやることですから、たまには起きます。

 

その場合、探偵はすぐには諦めず、まずローラー調査します。

 

場所にもよりますが、それでリカバリーできる場合もあるのです。

 

2019年の原一さんへの取材時にその体験談を聞けたので、紹介します。

 

依頼者の話から都内または近場の調査を想定していたのに、ターゲットの車は羽田に向かった。

 

旅行は想定外で行き先も不明だったが、ここでやめるわけにはいかない。

 

国内線の発着スケジュールやターゲットのチケットカウンターでの様子の観察から、行先は札幌と推定。

 

確証はないが、我々は札幌行きのチケットを求め、運よく空席があった。

 

推測は当たっていて、我々はターゲットと同じ便で札幌に向かった。

 

ターゲットはレンタカーを借りたので、我々もレンタカーで追うことにした。

 

まだ札幌に拠点がない時代の話で、現地拠点に協力を頼むことはできなかった。

 

普通、車両尾行は2台以上でチームを組んでやるが、この時は1台だけ。

 

まったく想定外の事態で何も準備できていない。

 

尾行開始から4時間後に不覚にも失尾してしまった。

 

諦めずに、昼は観光地、夜は宿泊施設の駐車場にローラー調査をかけた。

 

札幌市内などの都市部では、こういう場合にローラー調査でリカバリーするのは難しい。

 

しかし、田舎では土地が広大な反面、典型的な行先が絞られるので勝算はあると考えた。

 

3日目の夜に函館で発見。

 

証拠写真も撮れた。

 

ターゲットは翌日、飛行機で東京に移動。

 

リレー調査(東京にいる探偵への引継ぎ)で女の所在調査(住所を調べる)も成功。

 

大胆に予想して先回りしたことが功を奏した。

 

しかし、運がよかったことも多分にあると思う。

 

(原一のベテラン探偵 談)