徒歩尾行と車両尾行のテクニック図解|プロ探偵への取材に基づく行動調査技術の詳細紹介

徒歩尾行と車両尾行のテクニック図解|プロ探偵への取材に基づく行動調査技術の詳細紹介

尾行のテクニック

大手有名探偵社への取材の中で教えてもらった調査技術を紹介するコーナーです。

 

今回は行動調査(尾行&撮影記録)の尾行に関する話です。

 

 

尾行は探偵技術の粋

行動調査とは、対象を尾行し、写真や動画で対象の行動を記録する調査です。

 

写真を時系列に並べ、場所の詳細情報(路線、駅、店名等)とともに報告します。

 

クロル探偵社 浮気調査報告書サンプル

【クロル探偵社 浮気調査報告書サンプル】

 

最も基本的な調査技術で、最も多用する技法でもあります。

 

浮気調査も素行調査も調査目的が違うだけで、行動調査の一種です。

 

その中でも尾行は基盤ないし中核をなす技術です。

 

撮影も難しいですが、尾行ができていなければ撮影チャンスもつかめません。

 

そこではどんなテクニックが使われているのか?

 

このページではほんのさわりを紹介します。

 

探偵の尾行は長時間

探偵の尾行は、一般に5~8時間といった長時間に及びます。

 

浮気調査の場合
ラブホテル出入りの写真を撮ることが目的です。

 

「不貞行為」の証拠が必要
慰謝料請求や離婚裁判で証拠として使われるのはそういう写真です。

 

肉体関係を示す証拠が必要で、デートを撮っただけではダメなのです。

 

よって、ターゲットがホテルや愛人宅に行くまで追い続けねばなりません。

 

尾行を始めて、対象が愛人と合流し、買い物や食事をし、ホテルに入って出てくるまでです。

 

少なくとも数時間、長い時は何日にも渡って尾行を続けねばならないのです。

 

一般的には5~6時間は要します。

 

素行調査の場合
8時間といった契約時間の間、対象の全行動を映像で記録します。

 

よって、これもまた長時間の尾行です。

 

本格的尾行の難しさ

30分以内とかの短時間なら、素人の単独尾行でもうまく行く場合があります。

 

しかし、5時間以上となるとそんなやり方では絶対無理です。

 

必ず失尾(見失う)か発覚(バレる)します。

 

大混雑の中などの悪条件のもとでは、短時間でも維持できないでしょう。

 

「人の後をつけるぐらい簡単では?」と考える人もいるようですが、とんでもないことです。

 

尾行のジレンマ
尾行とは、結局は次のジレンマとの戦いです。

 

  • 近づきすぎると発覚しやすい
  • 距離を取りすぎると失尾しやすい

 

両者の間でバランスを取りつつ、距離を調節します。

 

まず、下記の2つが距離の取り方の大原則です。

  1. 周囲に人が多い場所では距離を詰める
  2. 周囲に人が少ない場所では距離を取る

これに対象の様子を加味して微調整します。

 

油断していれば近づき、警戒を感じたら離れます。

 

かすかな警戒兆候を感じ取るのは資質が必要です。

 

訓練もありますが、教えて教えきれるものではないと取材で聞いています。

 

これを目的を達するまで維持していくわけです。

 

しかし、一人では限界があり、長時間持ちません。

 

トイレという問題
そもそもそんなに長時間、トイレに行かないということが不可能です。

 

特に真冬の尾行は尿意の我慢に限界があります。

 

トイレに行けば、目を離した隙に失尾する危険が非常に大きいです。

 

正面写真もほしい問題
証拠写真は、人物が誰かわかりにくいと証拠としての品質が落ちます。

 

ほとんど識別できないような状態だと証拠価値ゼロです。

 

人物がわかりやすいためには、正面写真が多い方が望ましいです。

 

後ろ姿の写真しかない場合より、断然強いです。

 

しかし、単独尾行では失尾や発覚をしないよう、後ろからついていくだけで精一杯。

 

正面に回り込むのは至難の業です。

 

プロの尾行はチーム尾行

この問題に対するプロの解答は、2人以上チームで尾行するということです。

 

一番基本的な動きは下記のものです。

 

  • 交代: ターゲットを近距離で追う役割を定期的に交代することで発覚の確率を下げる
  • 先回り: 一人が尾行を続ける間に、別の者が別の道を通って先回りする

 

この動きは徒歩尾行でも車両尾行でも共通して使われます。

 

交代の図解

上記の動きを具体的に図で説明してみましょう。

 

交代: ターゲットを近距離で追う役割を定期的に交代することで発覚の確率を下げる

 

徒歩尾行の場合

徒歩尾行MOVE1の図解1

 

ターゲット(T)を探偵Aが近くで追っており、探偵Bはその後ろで二人を見ながらついてきている。

 

徒歩尾行MOVE1の図解2

 

探偵Aは交差点で曲がっていったん尾行から離脱し、探偵BがターゲットTとの距離を詰める。

 

徒歩尾行MOVE1の図解3

 

探偵Aは近くで追う役割を探偵Bと交代し、TとBの後ろから尾行に復帰した。

 

単にT近くのポジションを交代するだけでなく、帽子や眼鏡を着脱したり、服を着替えることにより、別人に見せかければ、発覚の確率をさらに下げられる。

 

車両尾行の場合

車両尾行MOVE1の図解1

 

ターゲットの車Tを調査車両Aが近くで追っている。

 

真後ろにつけるとルームミラーでナンバープレートや車内の様子を見られて発覚につながりやすい。

 

そこで、たまたまそこを走っていた無関係の一般車両を間に挟むことがよく行われる。

 

2台、3台とたくさん間に挟むほど発覚のリスクは減るが、失尾のリスクが上昇する。

 

実際は1台挟むだけでも、熟練していないと失敗しやすい。

 

(一般車両を間に挟むテクニックを否定する探偵社もあるが、私は1回目の原一探偵事務所の公開尾行訓練に参加した時に実際にやるのを見せてもらい、強い感銘を受けた。その時の体験記はコチラ。)

 

車両尾行MOVE1の図解2

 

T車は左折ウインカーを出したので、A車はB車に無線でそれを伝え、役割交代を指示。

 

A車は交差点を直進して、いったん尾行から離脱する。

 

B車が左折してT車を近くで追う役割を引継ぐ。

 

適当なところでまた別の一般車両を見つけて間に挟む。

 

A車は適当な道を辿って、B車の後ろから尾行に復帰する。

 

先回りの図解

 

先回り: 一人が尾行を続ける間に、別の者が別の道を通って先回りする

 

徒歩尾行の場合

徒歩尾行MOVE2の図解1

 

ターゲットTを探偵Aが近距離で尾行し、探偵Bはその後ろを歩いているが、先回りをするよう指示を受けた。

 

徒歩尾行MOVE2の図解2

 

探偵Bは別の道を早足で回ってTの前方に現れ、素知らぬ顔で隠しカメラを使ってTの正面写真を撮ることに成功した。

 

浮気調査の場合、人物の顔が鮮明でないと証拠価値がないので、正面写真は大切。

 

安い探偵社、下手な探偵社に頼むと後ろ姿ばかりの報告書を渡されることになる。

 

チーム尾行なら正面写真を撮るのはそれほど難しくないことがわかる。

 

車両尾行の場合

車両尾行MOVE2の図解1

 

ターゲット車Tを調査車両Aが追尾している間に、調査車両Bは先回りして十字路を折れたところで待機している。

 

この図では路上に駐車して待機しているが、交差点通過時にTに見られて不審に思われるリスクがなくはない。

 

ファミレスの駐車場などから出てきたら一層自然で疑われる心配がないので、そういうものがある時は利用する。

 

車両尾行MOVE2の図解2

 

A車からT車が交差点を通過するタイミングを無線で聞いてB車は車を出し、T車を目視の上、追尾開始する。

 

車両尾行MOVE2の図解3

 

こうしてB車はA車と役割交代した。

 

より高等なテクニックの一例

ここまで説明したことは、チーム尾行のごくごく初歩にすぎません。

 

このページで紹介しきれませんが、もっといろいろなテクニックがあるのです。

 

一つだけ紹介しておきましょう。

 

徒歩尾行の進んだテクニック

徒歩尾行の進んだテクニック図解

 

探偵はターゲットの後ろを歩いているとは限らない。

 

この図では、探偵Aは車道を挟んで向こう側の歩道を歩いている。

 

これは気づかれにくいので、よく行われる。

 

さらに驚いたことに探偵Bは一本隣の通りを歩いて、ターゲットTが交差点を渡るたびに望遠ビデオカメラで撮影している。

 

Tを目視しているAから無線で状況報告されるので、Tが見えない時間が長くてもBはTを見失わない。

 

尾行者がビルを隔てた隣の通りを歩いているなど、一般人の想像力の圏外である。

 

こうして知識として教えられても、現場で探偵を識別するのは不可能である。

 

チームメンバーの役割

対象の一番近くで尾行する役割のメンバー以外の人も役割があります。

 

単に次の交代に備えて移動しているだけではありません。

 

その役割の代表が、今見ていただいた「先回り」、下の①です。

 

  1. 先回りして正面撮影や交代に備える
  2. Google Mapで進行方向に何があるか検索し、知らせる
  3. メンバーがトイレに行っている間、尾行を続行する
  4. メイン尾行者が破綻した時に立て直す

 

④立て直しの例
例えば対象が急にUターンしてきたとします。

 

別に怪しんでいなくても、急にUターンすることはたまにあります。

 

道を間違えたとか、何かを思いだしたとか。

 

そういう場合、メインの尾行者が変な動きをすると発覚してしまいます。

 

そのまま進んで知らん顔ですれ違うしかない。

 

そして十分距離が取れるまで振り返ることはできません。

 

振り返った時に対象が自分を見ていて目が合えば即発覚です。

 

この時、他のメンバーが対象の尾行を続けて失尾しないようにします。

 

最初のメインの尾行者だった探偵は、後からチームに復帰します。

 

今の例のようなハプニングやメンバーのミスを協力してカバーし、尾行を維持していくのです。

 

装備も重要

ここまで尾行のテクニックを説明してきました。

 

探偵のテクニック・スキルが最重要なのは間違いないですが、装備もまた重要です。

 

それは強い兵士であっても武器・弾薬が劣れば勝てないのと同じです。

 

尾行の武器といえば、まず車やバイクでしょう。

 

怪しまれたら、すぐ替えを投入できる余裕が欲しいところです。

 

都内は維持費が高額なため、車が1台しかないような零細探偵社が多い。

 

そういうところに車両尾行の比率が高い調査を任せるのは、とてもリスキーです。

 

100台以上の調査車両を保有する原一

【100台以上の調査車両を保有する原一】

 

また、チーム尾行には信頼性の高い通信システムが必須です。

 

一瞬でも通信が途切れたら、連携が取れなくなって、失尾や発覚が起きます。

 

スマホもかなり進歩していますが、業界大手の原一さんでは警察と同水準の無線を使用します。

 

探偵1人に1台と調査車両1台に1台ずつ配備しているそうです。

 

デジタル業務無線

【デジタル業務無線】

 

YouTube 尾行テクニック

当社で制作している尾行テクニックの動画を集めました。

 

尾行は文章だけより動画で見た方が理解が深まります。

 

徒歩尾行のテクニック

 

車両尾行のテクニック

 

車両尾行 警戒行動パターン集

関連記事紹介

張り込みの技術

尾行と張り込みはセットで必要になる技術です。

 

例えば、尾行のスタートは必ず対象者が現れるのを待つ張り込みで始まります。

 

尾行中に探偵がついていけない場所に入られた場合は、出てくるのを張り込んで待つことになります。

 

浮気調査の最終にして最重要のプロセスであるラブホ出待ちも張り込みです。

 

張り込みはただ待っていればいいという簡単なものではありません。

 

対象者に見つかってはいけないだけでなく、近隣住民にも怪しまれてはいけないのです。

 

探偵への取材に基づくレアな技術情報を公開しているので、ぜひ読んでみてください。

 

 

尾行の実戦体験

 

尾行の基礎がわかったら、次はぜひ実戦を体験してほしいです。

 

探偵の尾行など実際に見る機会はなかなかないですが、このサイトの管理者の私が体験してきたことの報告を読めば、近い体験ができます。

 

業界大手有名社の原一探偵事務所は、メディアに新人探偵の尾行訓練を兼ねた尾行体験プログラムを提供しています。

 

私もこれまでに2回、それぞれ違う内容で参加しました。

 

実によくできたプログラムで、追う側も追われる側も体験でき、その中での探偵の動きがわかるようになっています。

 

エキサイティングで興味深い内容なので、ぜひ読んでみてください。

 

 

車両尾行メインで、まず追われる側を体験し、ショッピングモール内での徒歩尾行を挟んで、車で追う側を体験するようになっています。

 

 

徒歩、および電車で移動しながら追われる内容です。

 

興味深いのは、新幹線移動への対処が含まれている点です。