【積水ハウス地面師詐欺事件|企業調査考察ノート】

基本的な調査を怠った結果の惨劇

企業における不祥事や詐欺をはじめとする諸問題と、探偵を活用した解決方法を考察していくコーナーです。

 

今回は2017年に起きた「積水ハウス地面師詐欺事件」を取り上げます。

 

事件の概要

2017年6月1日に、大手ハウスメーカーの積水ハウスが土地の購入代金55億5千万円をだまし取られた事件です。

 

犯人は所有者になりすました女とそのグループ。

 

土地の所有者になりすまして金をだまし取る「地面師」という詐欺師たちです。

 

物件は品川区五反田駅そばの旅館「海喜館」。

 

この立地で600坪の土地は不動産業界でも垂涎の的でした。

 

そんな物件が手に入るという話が、都心でのマンション用地を探していた積水ハウスのマンション事業部に持ち込まれました。

 

同社は飛びつき、70億円で購入する売買契約を締結。

 

所有権移転仮登記の後、購入代金の大半を支払い、所有権移転登記の申請をしました。

 

しかし、しばらくして法務局から却下の連絡がありました。

 

所有権移転が認められたのは、死去していたオーナーの実弟で、移転の原因は相続。

 

8月2日に積水ハウスは詐欺被害に遭ったことを認め、メディアはさかんに報道しました。

 

その後、犯人グループ10人は逮捕され、主犯格は懲役11年を言い渡されました。

 

旅館はすでに取り壊され、土地は旭化成のグループ会社が取得しています。

 

詐欺が成功した要因

この詐欺が成功した要因はいろいろ基本的な裏取りを怠ったことです。

 

まず、「所有者」の写真を見せて、本物かどうか近所に聞き込みをするという調査があるが、これをしなかった。

 

不動産会社が地面師対策として普通に行っている基本的な調査です。

 

周囲に人家が少ない土地や新しい家ばかりの土地だと、聞き込みをしても誰も所有者を知らないということはあります。

 

しかし、「海喜館」の場合は近所で知らない人はいないほどでしたから、調査をかけていればすぐにわかったはずです。

 

積水ハウスマンション事業部はなぜそれをしなかったのか?

 

そこには当時の社長の介入による勇み足がありました。

 

早い時期に地面師たちに引き合わされた社長はすっかりその気になり、他の購入者に取られてしまわないかと焦っていました。

 

この取引にはほかにもいろいろ怪しい兆候があり、積水ハウスの現場は精査を望んでいたのですが、社長はそれを抑え込んでしまいました。

 

そのため、基本に忠実なら簡単に防げた詐欺に引っ掛かり、巨額の損失を出すことになりました。

 

大企業で不動産取引のプロの会社でもこんなことがあるのです。

 

不動産取引に慣れていない会社やワンマン社長の会社は、地面師を警戒する必要があります。

 

地面師について

大きなイベントを控えたりして不動産購入意欲が高まる時期が地面師たちのチャンスです。

 

最近でいえば、例えば2020年の東京オリンピック前の時期で、積水ハウスの事件はまさにこの時期に起きました。

 

地面師に狙われやすい物件
長期間、更地や空き家のままの物件 購入希望者が事前調査で現地訪問しても、所有者の特定が難しい。近所で聞き込みをしてもわからないことが多い。
所有者が古くから同じ物件 所有者が高齢、故人などで成りすましやすいことが多い。
抵当権などの担保権設定がない物件 抵当権抹消などの手続きは不正がバレるもと。売却にそういうものが不要な「きれいな物件」が好まれる

 

「海喜館」はまさに上記のような条件にあてはまる物件でした。

 

今は地面師が仕事をしやすい環境

地面師は昔からいますが、現代は彼らにとって非常に仕事がしやすい環境になっています。

 

ひとつは、デジタル技術の急速な進歩で証書、ID、印鑑などの高精度な偽造が可能になっていること。

 

運転免許証やパスポートも非常に精巧な偽造が可能になっているし、実印を3Dプリンタで作ってしまう場合もあります。

 

もうひとつは2005年の不動産登記法改正で「本人確認情報提供制度」というものが作られて、権利書がなくても登記ができるようになったことです。

 

弁護士や司法書士が所有者の本人確認情報を作成して法務局に提供することで、権利書なしの登記が可能になりました。

 

これは本来、権利書を紛失していた場合などの手続きを簡素化する狙いですが、結果的に地面師の仕事をやりやすくしてしまっています。

 

探偵の活用について

聞き込み調査は探偵の仕事です。

 

所有者の写真を見せて近所で間違いないか確認を取ってくるという作業は彼らに任せることができます。

 

ただ、調査していることがバレないようにしたい場合は、できる探偵が限られてきます。

 

あと、不動産の所有者と連絡が取れない場合も探偵が使えます。

 

ほしい土地・建物があって、司法書士の先生に相談して、登記簿を調べて、所有者に手紙を送るが、一向に反応がない。

 

現地に行ってみると空き家で、司法書士の手紙がポストに溜まっている。

 

近所に聞いても所有者の名前や住所はわからない。

 

そういう時に所有者を探し当てるノウハウを持った探偵がいます。

 

ただ、これも浮気調査と違って、どこの探偵社でもできることではありません。

 

よく話を聞いて経験・実績を見極めてから依頼する必要があります。

 

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